図書館で会いましょう
「今度の展示についてなんだが…」
由美の仕事は司書と言っても少し特殊だ。この図書館は2年前に立て替えた後、広い展示室がある。そこで色々と図書館で保管してある資料などを展示するのだが、由美はその企画や資料にまつわる研究を担当している。柴田館長が招かれた理由もその責任者としてだ。最初は初めてのことで由美も戸惑いを隠せなかったがやることは大学とあまり変わらないし、展示を見た客の笑顔に楽しみを感じることができた。
『受けて良かったかな?』
最初は五月病になるかもしれないと心配をしていたが、いつの間にかそれは消えていた。
由美の日常は資料の研究、そして図書館に置く本の選定や窓口もこなす。思った以上に忙しいのだが、それはそれで楽しく感じていた。
「こんな感じでいこうか?」
「はい。」
机の上に広げた資料を整理する。
「明日は休みだったね?」
由美は明日、休みを取っていた。
「すいません。忙しい時に…」
由美は申し訳なさそうに柴田館長を見つめる。館長はそれを拭うように微笑み、
「大丈夫だよ。遠山さんもこっち来てからほとんど休み無しだったろ?ゆっくり休みなさい。」
館長の言葉に安堵の表情を見せた。

「お疲れ様です。」
閉館後、整理をしてから図書館を出る。途中でスーパーに寄り、夕飯の買い物はするが帰り道もいつもの並木通りを通る。
『今日は少し雲があるな…』
ふと空を見上げると星は雲に隠れている。ここは都心と比べてだいぶ空気が澄んでいる。天気の良い日なら星がよく見える。由美が越してきて最初に感動したのも星空だった。
『明日で一年か…』
由美の表情は空と同じようになった。由美が明日を休みにしたのには訳があった。自転車での帰り道の途中にあるコンビニに立ち寄りワインを買っていった。
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