図書館で会いましょう
男の声もさっきまでの無愛想なものから少し柔らかい口調になっていた。それが今までの重い空気を軽くさせていく。
「趣味でそんなにうまいんですねぇ。」
自分ではどんなに頑張っても無理だなと感じた。
「ありがとう。でもそれほどでもないですよ。もっとうまい人は沢山いますから。」
男が初めて微笑んだ。それを見て由美も微笑む。さっきまでの空気は何だったんだろうと思うぐらいだった。
男が再び筆を動かそうと手を上げた時だった。
「この土地の人ではないんですね?」
と問いかけてきた。由美はいきなりのこの問いに驚いたが、
「はい。この春に東京から…わかります…?」
「わかりますよ。イントネーションが違いますから。」
こっちへ来てから思ったのはそんなに方言がないんだなということだった。しかし実際に会話をしてみるとこの男性と同じことを言われる。やはり微妙に違うんだなと由美は感じていた。
「あなたはラッキーですね。」
男が言う。予期せぬ言葉に由美は戸惑う。
「ラッキー…?」
どういう意味なのか分からぬ由美を見て男は微笑む。
「ええ。この場所って地元の人間でもあまり知らないんです。公園があるということは知っててもこういう天気の時にこんな景色になるってことをね。」
「そうなんですか?」
「ええ。この土地って天気が変わりやすくて晴れててもすぐ雲が出てきたりしてね。こんな雲一つない空っていうのはあまり無い。しかもここはみんな、図書館がある公園に行くからあまり人も来ないですから。」
男は淡々と話ながら筆を動かす。由美は改めて周りを見たが確かに人はいなかった。男からそう言われてまた景色を見る。
「きれい…」
何とも言えない嬉しさが込み上げてきた。しばらく由美は男の存在を忘れ、目の前の景色に魅入っていた。
「よし。」
男がそう呟くと画材をしまい始めた。その音で由美は夢から覚める。
「あれ?終わったんですか?」
「ええ。ここまで描けたら後は家でも仕上げができるんで。それじゃ。」
そう言って早速とその場から立ち去った。木々の影に消えてく男の後ろ姿を見て、
『不思議な人…』
それが由美の印象だった。
「趣味でそんなにうまいんですねぇ。」
自分ではどんなに頑張っても無理だなと感じた。
「ありがとう。でもそれほどでもないですよ。もっとうまい人は沢山いますから。」
男が初めて微笑んだ。それを見て由美も微笑む。さっきまでの空気は何だったんだろうと思うぐらいだった。
男が再び筆を動かそうと手を上げた時だった。
「この土地の人ではないんですね?」
と問いかけてきた。由美はいきなりのこの問いに驚いたが、
「はい。この春に東京から…わかります…?」
「わかりますよ。イントネーションが違いますから。」
こっちへ来てから思ったのはそんなに方言がないんだなということだった。しかし実際に会話をしてみるとこの男性と同じことを言われる。やはり微妙に違うんだなと由美は感じていた。
「あなたはラッキーですね。」
男が言う。予期せぬ言葉に由美は戸惑う。
「ラッキー…?」
どういう意味なのか分からぬ由美を見て男は微笑む。
「ええ。この場所って地元の人間でもあまり知らないんです。公園があるということは知っててもこういう天気の時にこんな景色になるってことをね。」
「そうなんですか?」
「ええ。この土地って天気が変わりやすくて晴れててもすぐ雲が出てきたりしてね。こんな雲一つない空っていうのはあまり無い。しかもここはみんな、図書館がある公園に行くからあまり人も来ないですから。」
男は淡々と話ながら筆を動かす。由美は改めて周りを見たが確かに人はいなかった。男からそう言われてまた景色を見る。
「きれい…」
何とも言えない嬉しさが込み上げてきた。しばらく由美は男の存在を忘れ、目の前の景色に魅入っていた。
「よし。」
男がそう呟くと画材をしまい始めた。その音で由美は夢から覚める。
「あれ?終わったんですか?」
「ええ。ここまで描けたら後は家でも仕上げができるんで。それじゃ。」
そう言って早速とその場から立ち去った。木々の影に消えてく男の後ろ姿を見て、
『不思議な人…』
それが由美の印象だった。