図書館で会いましょう
その日の仕事を終え、由美は図書館を出た。
「疲れたー。」
思いっきり背筋を伸ばす。北澤の件もあってか今日はやけに疲れを感じていた。「今日のご飯、何にしようかな?」
そんなことを呟きながら自転車置き場から自転車を出す。由美が自転車に乗ろうとした時、図書館の前のベンチに座る人物を見つけた。北澤晃だった。
「北澤さん…?」
向こうに聞こえるか聞こえないかの声を出すと北澤は反応し、由美のほうに顔を向けた。
「どうも…」
向こうも聞こえるか聞こえないかの声を出したが由美には確実に聞こえていた。由美はベンチの前で足を止める。
「どうしたん…ですか?」
北澤は一度自宅に戻ったのか、その手には昼間の写真集は無かった。
「いや…遠山さんにちゃんとお礼を言いたくて。待ってました。」
淡々とした口調だ。
「いやぁ。あれは館長が決めたことですし…私は何も…」
昼間のやりとりを振り返っても由美にはお礼を言われる理由が思い浮かばなかった。
「そうですか…?」
北澤はそう言った後、黙ってしまった。何か考えているようにも見える。
「北澤さん?」
沈黙に耐えられない由美は北澤に話かける。
「とりあえず僕はお礼がしたいんです。…食事とかいかがですか?」
急にあわてふためくように早口になった。さっきまでとのギャップに由美は目を丸くした。
「でも…やっぱり私がお礼を言われる筋合いはないかと…?」
食事というキーワードに一瞬魅力を感じたが、食事に行っても何を話せば良いのか分からない。言ったら逆に申し訳ないような気がしてならなかった。
「そうですか…」
北澤の声のトーンが落ちる。悩んでいるのか困っているのか、北澤は自分の後頭をポリポリとかいていた。その様子を見ているとこのまま無下にするのが気の毒に思えた。
「そうだ、北澤さん。」
「はい?」
「あの絵ってもうできたんですか?」
「あの絵って?」
「ほら。私と初めて会った時に描いてた絵です。」
「あぁ。あともう少しで出来上がります。」
「なら、出来たら見せていただけませんか?私へのお礼はそれで。」
あの時の絵が見たいのは由美の正直な気持ちだった。それを見せてくれる程度なら自分もそんなに気が重くならない。そんな由美の提案に北澤の表情は明るくなる。
「疲れたー。」
思いっきり背筋を伸ばす。北澤の件もあってか今日はやけに疲れを感じていた。「今日のご飯、何にしようかな?」
そんなことを呟きながら自転車置き場から自転車を出す。由美が自転車に乗ろうとした時、図書館の前のベンチに座る人物を見つけた。北澤晃だった。
「北澤さん…?」
向こうに聞こえるか聞こえないかの声を出すと北澤は反応し、由美のほうに顔を向けた。
「どうも…」
向こうも聞こえるか聞こえないかの声を出したが由美には確実に聞こえていた。由美はベンチの前で足を止める。
「どうしたん…ですか?」
北澤は一度自宅に戻ったのか、その手には昼間の写真集は無かった。
「いや…遠山さんにちゃんとお礼を言いたくて。待ってました。」
淡々とした口調だ。
「いやぁ。あれは館長が決めたことですし…私は何も…」
昼間のやりとりを振り返っても由美にはお礼を言われる理由が思い浮かばなかった。
「そうですか…?」
北澤はそう言った後、黙ってしまった。何か考えているようにも見える。
「北澤さん?」
沈黙に耐えられない由美は北澤に話かける。
「とりあえず僕はお礼がしたいんです。…食事とかいかがですか?」
急にあわてふためくように早口になった。さっきまでとのギャップに由美は目を丸くした。
「でも…やっぱり私がお礼を言われる筋合いはないかと…?」
食事というキーワードに一瞬魅力を感じたが、食事に行っても何を話せば良いのか分からない。言ったら逆に申し訳ないような気がしてならなかった。
「そうですか…」
北澤の声のトーンが落ちる。悩んでいるのか困っているのか、北澤は自分の後頭をポリポリとかいていた。その様子を見ているとこのまま無下にするのが気の毒に思えた。
「そうだ、北澤さん。」
「はい?」
「あの絵ってもうできたんですか?」
「あの絵って?」
「ほら。私と初めて会った時に描いてた絵です。」
「あぁ。あともう少しで出来上がります。」
「なら、出来たら見せていただけませんか?私へのお礼はそれで。」
あの時の絵が見たいのは由美の正直な気持ちだった。それを見せてくれる程度なら自分もそんなに気が重くならない。そんな由美の提案に北澤の表情は明るくなる。