図書館で会いましょう
複雑な想い
北澤の家での一件から一週間が過ぎた。由美には未だに北澤に抱き締められた時の腕の感触が残っていた。誠司との別れ以来、男性にあんな風に抱き締められたのは初めてだった。それに驚いたこともある。だが、それ以上に驚いているのは北澤晃という男性の感情を受け入れた自分に驚いていた。ただ抱き締められただけ。それ以上のことはない。だが、それでもあの出来事を受け入れた自分に驚く。そんな状態だから正直、仕事も手につかなかった。季節感はないが、秋に向けた展示会の準備を進めないといけないのに、思うように進まない日が続いていた。
「おねーちゃん。」
貸出カウンターに座ってぼぉとしているとカウンターの下から高い声がする。のぞきこむと小さな女の子が体には大きい絵本を抱えていた。
「あら、まりみちゃん。」
女の子はまりみちゃんと言って、いわゆる図書館の常連だ。毎日のようにお母さんと一緒に図書館に来ては絵本を借りていく。
「今日はお母さんは?」
そう言うと小さな指で『向こう』と示す。
「ねーおねーちゃん。」
「なーに?」
「何かあったの?」
いきなりの問いに由美は驚きを隠せない。
「どうして…?」
まりみちゃんはよくなついていて、色々と話しかけてくれるが、こんなことを言われたのは初めてだった。
「何か、おねーちゃん、困った顔してるから。」
子供の問いかけは素直だ。まりみちゃんの問いに由美は言葉を探す。
「おねーちゃん。」
貸出カウンターに座ってぼぉとしているとカウンターの下から高い声がする。のぞきこむと小さな女の子が体には大きい絵本を抱えていた。
「あら、まりみちゃん。」
女の子はまりみちゃんと言って、いわゆる図書館の常連だ。毎日のようにお母さんと一緒に図書館に来ては絵本を借りていく。
「今日はお母さんは?」
そう言うと小さな指で『向こう』と示す。
「ねーおねーちゃん。」
「なーに?」
「何かあったの?」
いきなりの問いに由美は驚きを隠せない。
「どうして…?」
まりみちゃんはよくなついていて、色々と話しかけてくれるが、こんなことを言われたのは初めてだった。
「何か、おねーちゃん、困った顔してるから。」
子供の問いかけは素直だ。まりみちゃんの問いに由美は言葉を探す。