図書館で会いましょう
館長の言葉は由美には無い考えだった。
「私には妻が全てでした。そんな妻が私の中で生きていると考えると、それまでの虚無感は消えたんです。」
由美は黙っている。自分は誠司を失った悲しみだけに捕われていた。それが誠司が望んでいることだったのか、自問自答していた。
館長はカップをテーブルの上に置く。そして陽も落ち、暗くなった外を見る。
「この町はいいですよね。町全体が温かい。昔の傷も癒してくれる温かさがね。」
由美はうつむき加減で黙って聞いていた。いつしか涙が流れはじめていた。
「遠山さん。あなたと知り合ってからさほど時間は経っていませんが、あなたが優しい人だというのはよく分かっています。その優しさを自分のためにも使うべきです。」
「はい…」
由美は涙をぬぐいながら頷く。
「あなたは弱くない。きっと現実を受け入れることができるはず。さぁ、もう休むのはやめて前に進みなさい。」
館長は優しく、由美の肩を軽くたたいた。由美は黙ってそれに応えた。
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