先生とあたしの恋

いつしか、会話がなくなり


車の中は、『ボレロ』のメロディーだけが、流れていた…。



先生の横顔を、チラっと見てみたら


なんだか、いつもと違う感じがしたけど

下を向いて


もう一度、 見てみたら


今度は、いつもの先生の顔に戻って




そして、曲を途中で止めた先生。



代わりに、ラジオから



明るい男の人の人の歌声が流れてきた。


「藤井、この曲って知っているか?」



「いいえ、分からないです。」



「先生も知らないんだよ」



「先生も、知らない事ってあるんですね」



「そうだなぁ~アハハハァ~~~」って


先生が、明るく笑うから



あたしも一緒に笑えたよ。


「先生って、どんな曲を聴くんですか?」


「あ、俺?」


俺って言葉…新鮮に聞こえた。



「サヨコが、好きかな。」



「あたしも♪サヨコ、大好きです。」
「そうかぁ~じゃあ、サヨコの曲、聴くか?」


「はい♪」



それからは、サヨコの曲を聴きながら、サヨコの話しをして


車は、ドンドン美術館から遠くなり

あたしの家のすぐ近くまで……


来てしまったよ。



先生…



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