ドール
「な、なんでここにいるのよ。ここはあなたがいるべきところでは無いわ。さぁ、出ておゆき!! ぃやっこっちに来ないで!!」
奈美は黒のシンプルなワンピースに身を包み、部屋の隅でラス(犬の名前)にしっし、とやっていた。
「犬、苦手なの?」
俺が聞くと、奈美は俺の存在にやっと気が付き、走ってこっちに来た。
「苦手も何も、だい嫌いよ」
「あ 敬語なおってる」
俺が言うと、奈美は俺の後ろに隠れながら言った。
「敬語使ってる場合じゃないでしょ てかはやく追い払って!!」
奈美のすごくおびえている様子がおもしろくて、俺はすこし悪戯をしてみた。
「ラス!!おいで!」
奈美は悲鳴を上げた。
「なにしてんの!!」
そして奈美は後ずさって部屋を出ようとした。
その瞬間、しまっていたドアから翔が入ってきて…。
ドゴッ
という鈍い音をたてて奈美はその場に倒れた。
「・・…あ。」
翔!!気付くのおそいぞ!!
奈美が倒れた拍子に、奈美のワンピースから、真っ白な太股が覗いた。
そこには、噛まれたような痛々しい傷跡が残っていた。
「だから犬嫌いなんだ。」
俺が言うと、奈美はバッと太股を隠した。
「奥様に言わないで」
翔はまた鼻で笑った。
「言うかよ馬鹿」