ふたつの指輪

4. 心の奥で、何かが

昨日の朝はガンガン起こされたのに、今朝は尊さんはいっこうに起きてこなかった。



「ねぇ」

「……」

「ねぇってば」

「……んだよ」

「起きてよ。お願い」

「……土日くらい寝かせろ」

「だって、もう10時半だよ」


あたしは、ベッドに半分乗り上がって、尊さんを容赦なくゆさゆさと揺すった。


昨日の朝の仕返しだ!



「るせぇな」


やっと毛布から顔を出して、首だけ振り返った尊さんは、不機嫌そうにあたしを睨んだ。


素早く出された腕が、あたしの腕をぐっとつかむ。



「人のベッドに乗るな。襲うぞ」

「そんなこと言って……襲わないくせに」

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