ふたつの指輪
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「あ、あそこの喫茶店」


レトロな看板を指差すと、車は路肩にすぅっと止まった。


「どうもありがとう」


助手席から飛び出そうとするあたしに、あわてて声を掛ける。


「おい、後ろからバイク来てるぞ、出るときちゃんと後ろ見ろ」

「わっ、ほんとだ」

「……ほんと、目の離せないヤツだな」


苦笑しながら、ふっとやさしい目になった。


「何時に終わる?」

「8時」

「んじゃ、その頃迎えに来てやる」



あ、やっぱり何か疑われてます?




「……わかった。ありがとう」


あたしは尊さんに手を振ると、バイトしてる喫茶店に向かって駆けだした。



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