ふたつの指輪
(あぁぁ、びっくりしたぁぁ……)


内心の動揺を隠して、あたしはこそこそとベッドの端からすべり降りた。

まだ心臓がドキドキいってる。

だってね、目を開けたらすぐ隣に男の人がいたら、驚くよ。



とりあえず、何もなくて良かったぁ。



(よかった?――ホントに?)



ん?


何かが頭をかすめたのを、あたしは見て見ぬふりをした。




――それにしても、ベッドに人が寝てるのに気付かないなんてこと、あるかな?


なんて思いながら、パジャマ姿で歯を磨いてる尊さんをこっそり盗み見る。


と、鏡の中の尊さんと目が合った。




男らしい、ちょっぴりくやしいくらいにカッコいい精悍な顔。

”歯を磨く”っていう動作さえ、カッコよく見えちゃうよ。

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