ふたつの指輪
「自分の親は立派で、いい人だって、頭から信じてる」

「うん」

「しかし、親も人間で、実は100%完全じゃない。

それを、悲しいかな子どもは知らないわけで。

親の”ゆがみ”をそのまま受け継いでるんだよ、子どもってのは。

そのひずみが、成長するにつれていろんな問題となって出てくるわけだ」


「……なるほど」


あたしはうなずいた。


「ただ、”親が悪い”と思うのは抵抗があるだろ。

育ててくれた恩があるし、まさか親が自分に害を与えてたなんて、なかなか認められないからな」



うん、それはわかる。


まさにあたしもそう。



「――だから、盲点なんだ。


自分が親の負の遺産をそのまま引き継いでることに、誰も気付かない」


「……」


「自分が小さい頃の親の言動と、自分がどう感じたか、そして今どういう影響があるのか。

……じっくり思い返してみろよ。

いろいろ発見があるから」

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