ふたつの指輪
そのまま、また読みかけの本に目を落としていた尊さんは。


しばらくして、ふと言った。



「なぁ、気付いてるか?」

「え、何を?」

「おまえ、自分で自分のこと、やたら卑下するだろ?」

「え?」

「”何のとりえもない”とか、”あたしなんか”とか、やたらそういう言葉が出てくる」


「……だって、その通りだもん」


尊さんは、はぁ、とため息をついた。


「……どうして自分で自分のことをそう思うのか、考えたことあるか?」


「え?」


「前言ってたろ。

お母さんから、”何させてもダメな子だ”って言われたって」

「うん」

「そういうことって、小さい頃からよく言われてたか?」


「……うん。

一人じゃ何もできない子だ、とか、

あの男……お父さんのことね……にそっくりだからバカだとか、

出来が悪いとか、

何させてもろくにできないとか、いろいろ」
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