ふたつの指輪
「明日卒業式だったな。何時に出る?」


「――え?」


いきなりそんなことを言われて、一瞬わけがわからなくなる。


「ああ。ええと、8時くらい」

「駅まで送ってやる」

「……うん、ありがとう」




(さっきのは、何だったの?)



あたしの心に浮かび上がった何かは。


もう手でつかめない場所へふたたび潜ってしまっていた。

< 145 / 331 >

この作品をシェア

pagetop