ふたつの指輪
「それはいい傾向だろうな。

親だから、とか、自分を育ててくれたから、とかいうフィルターが消えて、お母さんという人間そのものをそのまま見られるようになったんだろう」


あたしはうなずいた。なるほどね。


「ママは怒ってたけど……

あたし、これまでずっと、本当の気持ちを抑えつけて”何もないフリ”をしてたんだって、よくよくわかったから」

「ああ」


「きっとあたし、これからはママと率直に、オープンに付き合える。

変な力関係や、主従関係なしに、ね。

そう思うことができたよ。

感じたことをその場その場できっと率直に言えるって。


時間はかかるかもしれないけどね。

……あたし、自分の気持ちをちゃんと言えてよかった」


尊さんは、うれしそうに目を細めてにっこり微笑んだ。



「ありがと、尊さん。ほんとに」



しみじみと言ったあたしの言葉に、尊さんは何も言わずにあたしの頭をくしゃっとなでた。

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