ふたつの指輪
尊さんはその黒い瞳でじっとあたしの目を見た。


あたしも、じっと見返す。




「尊さん、あたし、尊さんに会えてよかった」



素直に、心から、自然にその言葉が出てきた。



尊さんは、はっとしたように、息を小さく吸い込んだ。




「瞳衣、俺は………」



尊さんの手が、わずかにあたしの方に伸びた。




「え?なに?」




プルルルルル………




じっと見つめ合う二人の空間をカミソリのように切り裂いて。


不意にあたしの携帯が鳴った。



運命を告げるラッパの音のように、鋭く、高らかに。
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