ふたつの指輪
カバンを肩に掛けて、コートを手に取ろうとしてたその人は、ふと手を止めた。

眉間に深いしわを刻んで、あたしの方へ振り向く。



「……なんだって?」



「あたしだって、好きでこんなところに来たんじゃないもん」



少し涙のにじんだあたしの目と、

怪訝そうな目がかちっと合った。




プルルルルルッ



突然、インターフォンが沈黙を破る。



「レナちゃん、そろそろ時間です」


「……はい」



そのとき。


突然、後ろから伸びた手が強引にインターフォンを奪った。
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