ふたつの指輪
「しばらく連絡できなくてごめんね。

寂しかった?」


1ヶ月も連絡取れなかったことに、いろいろ思うところはあったけど。

そうやさしく問いかけるその言葉だけで、あたしは何もかも許せる気がした。



あたしのこと、ちゃんと気にしてくれてたんだ。


それだけでもういいや。



魁人くんの長い指がテーブル越しに伸びて、あたしの髪をもてあそぶ。


「オレ以外の男に目が行ったりしなかった?」


テーブルに白い腕で頬杖をついて。


薄茶色の瞳をくるっといたずらっぽく巡らせて、穏やかに言う。


言葉とはうらはらに、

(オレ以外に目が行くわけない)

という自信に満ち溢れた、余裕の微笑み。


「それがずっと心配だった。

――会いたかったよ、瞳衣」

「魁人くん……」


ずっと聞きたかった言葉に。


(会いたいと思っててくれたんだ)


思わず頬がゆるんじゃうあたし。
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