ふたつの指輪
「瞳衣の顔見ると、何だかほっとするんだよな」


歌うように言うと。


あたしの顎を持ち上げて、さっとテーブル越しに身を寄せると、軽く唇を吸った。



(あ……)



シュボッ


思わず顔に火がつく。



「かか魁人くん、ままマスターが見てるってば」

「構やしないよ。

見せつけてやればいい」



王子様は艶然と微笑むと、白くて長い指でテーブルに置かれたあたしの手を絡めとった。


「いつ見ても、きれいな手だね。

こんな手で洗い物してるの?」


って、魁人くんの手の方がきれいだよ。

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