ふたつの指輪
しなやかな手つきで、あたしの手をさらさらとなでながら。


魁人くんは、何気ないふうで切り出した。



「瞳衣に、ちょっとお願いがあるんだけどね」

「え?なに?」


「あのね」


王子様は微笑みながら、長い睫毛をばさばさ言わせてあたしを見つめた。



妖しくきらめく瞳に、何か迷いが生じたように見えた。

ふと、視線をそらす。



「……いや、いいや。また今度で」

「……?なに?」

「いいんだ、大したことじゃないから」

「……?」


けだるそうに頭を振る。


「明日も、ここでバイト?」

「あ、うん。そう」
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