ふたつの指輪
「瞳衣はよく働くね。

オレ瞳衣の働いてる姿、好きだな。

しばらくここで見てていい?」

「そんな、気になって仕事できないよ」

「あはは、そう?」

「あ、でも、時間あるんだったらゆっくりしてって」

「うん」


ちょうどそのとき、お客さんが入ってきて、あたしは立ち上がった。


「ごめん、仕事しなきゃ」

「うん、行って行って。

オレのことは気にしないで」


そうにっこり笑って手を振ると。


魁人くんはコーヒーをオーダーして、あたしの仕事っぷりをどこかぼんやりと眺めながら、携帯で長いこと誰かと話してた。


そばを通るお客さんが、魁人くんを振り返る。

(……目立つもんね。魁人くん)

あたしは何だか得意になったりして。


3時過ぎてお店が混み出すと、

「また連絡するね。仕事頑張って。

瞳衣の顔見れてよかった」


と耳元でささやいて、王子様は悠然と帰って行った。




(よかった……あたしのこと、ちゃんと覚えててくれて)


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