ふたつの指輪
「きゃっ」


「待て!延長だ、延長しろ」



(――え?)



驚いて、振り向いて端正な顔を見上げる。




……延長?




あたしには、そのとき伸びた手が、カンダタのつかんだ蜘蛛の糸のように見えた。

天から地獄へ降りてくる、細い細い、救いの糸。



「そうだ………わかったよっ」


インターフォン越しに何やら怒鳴っていたかと思うと。


「クソッ」


乱暴にインターフォンを壁に掛けると、カバンから財布を取り出した。


「1万だとさ。店員に今払えってよ」
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