ふたつの指輪

2. どうして?

「バイト時間じゃ、せわしないからね」


魁人くんの腕にそっと背中を抱かれて連れて行かれたのは、バイト先の近くのおしゃれなカフェ。



午前中なのに中はひどく暗くて、退廃的。



魁人くんらしいお店のチョイスだなって思った。


この人、やけに暗いところが似合うから。



「オレ朝メシ食ってないから、なんか食べるわ。

瞳衣も適当にオーダーして」


物憂げに、メニューを広げる。



魁人くん、昨日よりも心なしか憂鬱そうに見える。

いつもおだやかな微笑を浮かべてる魁人くんが。


(どうしたの?何かあったのかな)


フレンチトーストを優雅に食べてる魁人くんを、あたしは心配しつつじっと眺めてた。
< 174 / 331 >

この作品をシェア

pagetop