ふたつの指輪
「梨恵さんの代わりでしょ……どうせ、あたしは」


あたしは、しゃくりあげながらもう一度言ってた。


「あたしは、梨恵さんじゃないもん」


「……」


「魁人くんは、あたしを見てくれてるもん」



(ほんとに?)



自分で言っておきながら、自問してた。


その部分には全然自信が持てなかったから。



「梨恵は、関係ない」



尊さんは、そうぽつりと低い声でつぶやいて。


そして、物憂げに首を横に振った。




体を縮こまらせたまま返事をしないあたしを、複雑な目で長い間じっと見下ろしてた尊さんは。



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