ふたつの指輪
あたしの記憶は急によみがえった。


生々しく。



(思い出した――)



---


「ここなんだ」



けばけばしいネオンが光る街を歩いて、狭い階段を地下に降りると。


魁人くんはひとつのドアの前で止まった。



「こういうとこ、初めて?」


あでやかに微笑む魁人くん。



照明に照らされて、白い頬が青ざめて見えた。



(こういうとこ、っていうのがそもそもどんなところかわかんない)



魁人くんはドアを開けるとき、ノブを握ったまま一瞬ためらった。


(……?)
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