ふたつの指輪
「もちろんあたし、普通のバイトもやってるよ。

でもね、それじゃ単に生活保護がその分減らされるだけなの。

トータルの収入は増えないってわけ。


だから、借金返済分が足りなくて、それで、ママが……」



「生活保護って、いくら?」

「14万くらい」



「……なるほどな」


長い沈黙の後。


あごをさすりながら、その人はぽつりと言った。



「娘をこんなところでバイトさせるなんざ、ひでぇ母親だな」

「……ママはひとりであたしをここまで育ててくれたから」

「それとこれとは話が別だろ」


険しい目でギロリとあたしを睨む。


「お父さんに出て行かれて、一人で一生懸命働いてきて、自分のために使う時間もほとんどなかったし。

んで、今は会社から一方的にクビになって。


ママはかわいそうな人なの」
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