ふたつの指輪
「――なんだ、聞いてたの?」



少し首を傾げて。


王子様のやさしい笑みは、じわじわと邪悪な笑みに変わる。




口の端がゆっくりとつりあがって。


ニヤリと悪魔のように笑う天使のように整ったその顔は、ぞっとするほど美しかった。



「悪く思うなよ」




(――あ)



初めて触れる。


この人のナマの感情。



いつも、王子様の微笑の陰に隠されて見えなかった、むきだしの感情。



「これがオレの仕事なんだから」


フッ、と鼻で笑う姿は、邪悪な天使そのもの。
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