ふたつの指輪
「……あたし、わかってた」

「……?」



心のどこかでわかってた。

魁人くんに関わると、こういうことになるって。


こんな、道行く人のだれもが振り返る王子様みたいな人が、あたしに言い寄るなんて、そもそもおかしいもん。


きっと、結末はこっちだって、あたしは心のどこかで知ってた。



でも――信じたかったんだ。


魁人くんは、あたしのこと、ちょっとぐらいは、好きでいてくれるんじゃないかって。

5%でも、たとえ1%でも。……0.1%でも。


ゼロじゃない限り、それでよかった。



あたしは、そのわずかな望みに、しがみついてたんだ。


心の奥底で高らかに警告する声には、耳をふさいで。
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