ふたつの指輪
「わかってるよ」


あたしの返答に、魁人くんの口元が意地悪そうにゆがんだ。


「もっと言ってやろうか。


オレに大金払ってまで”抱いてくれ”って頭下げてくる女だって山ほどいるんだよ。


女にはまったく不自由してねぇの。

むしろ、女なんて面倒くせぇだけだ」


イライラした口調。


「女だまして金巻きあげるのが面白くて面白くて仕方ない。

いい気になってる女のバカづら見るのがすんげぇ楽しい。

だからこんな仕事やってんの」


吐き捨てるように言う。

いまいましげに頬にかかる髪をかきあげながら。


「わかってるってば」


あたしは思わず、はぁってため息をついてた。




「ねぇ、魁人くん。

最初から、”お店に来い”って言ってくれたらよかったのに。

そしたら、あたし……」


「……?」


片方の眉が、すぅっと上がった。

< 206 / 331 >

この作品をシェア

pagetop