ふたつの指輪
「いいのか?」


尊さんが、ためらいがちにそっと言った。



「あいつ、まだこっち見てる」


「……お願い、言わないで」





「本気で好きだったんだな」


誰に言うともなく、独り言のようにつぶやく。





「……」



(だれが、だれを?)



それ以上、尊さんは何も言わなかった。
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