ふたつの指輪
曲がり角を曲がる時。


どうしても、もう一度見ずにはいられなかった。



こっちを見ながら魂が抜けてしまったかのようにひとり立ちつくす、魁人くん。

色の薄い大きな目が、まだ、あたしをひたすら追いかけてた。


捨て猫みたいに。




わらわらと通行人が騒がしく通り過ぎる中。


まるでそこだけ時間が止まったみたいだった。



(魁人くん――)



心が、吸い寄せられていく――



「だめ、やっぱりちょっと行ってくる」


「……ああ」


微笑んで小さくうなずく尊さんをあとにして。


あたしは全力で走った。
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