ふたつの指輪
「ねぇ、ほんとにホストやめるの?」

「なんだよ、信じてなかったのかよ」


形の良いあごを挑発するように上げて、ちょっぴり唇をとがらせる。


「やめるっつったらやめるよ。

もちろん、引き留められてはいるけどさ。


どっちにしろ2週間は続けなきゃいけないけどな。

最初の決まりで、やめる2週間前に言わなきゃいけないことになってるから」


ちょっと肩をすくめると。

優雅な身のこなしで、さっと身を翻した。


「ちょっとシャワーしてくる」

「うん」


「瞳衣はシャワーした?」

「してない。着替えがないもん」


「そんなの、ハダカでいたらいいだろ」



……魁人くんらしい答えに、あたしは半ばあきれつつ、思わず笑ってしまった。
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