ふたつの指輪
やけにきっぱりそう言うと。

魁人くんは、じっとあたしの顔を覗き込んで、不意に言った。


「あいつ、普通の社会人?土日休み?」

「うん」

「じゃ、土曜日にでも会いに行ってこいよ」

「あ、でも、土曜日はバイトなの」

「やめちまえよ、そんなバイト」


すいぶんあっさり言う。


「オレが休みの時間にバイトに行っちまうなんて、それはナシだろ」


って、子どもじゃないんだから。


「オレといろよ」

「……うん、わかった」


なぜか言うとおりにしてしまうあたし。



「会いに行ってこいって、魁人くんは行かないの?」

「え?オレも?」


なぜかギョッとしたように、あたしを見る。
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