ふたつの指輪
「きゃ、ちょっと……」

「瞳衣……かわいいな、おまえ……」



魁人くんの伸ばした白い手が、カチッと枕元の電気を消した。







あたたかい肌に寄り添いながら。


「ねぇ……そんな、紙っぺらや指輪であたしを縛ろうとしなくても。

あたしはとっくに、魁人くんに夢中なのに。

わかんないの?」


そっと言った。


魁人くんは無邪気な笑顔で微笑み返す。


「いいからいいから。

オレはそういうので縛るのが好きなの」

「……」

「どうしてかわからないけど……何か確かなものがほしいんだ」

「魁人くん……」


(――確かなもの)

魁人くんの色の薄い瞳は、ふっと悲しげな色を帯びて遠くに投げられた。
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