ふたつの指輪
あたしをこの世の最後の望みみたいにじっと見つめるせつない瞳に。


(この人を守りたい――ずっと)


不意に涙がぽろっとこぼれて。



「ありがとう、魁人くん。

うれしい。


いるよ。

あたし、たとえ嫌がられても魁人くんのそばにずっといるよ」


「オレもう今、即死んでもいいや」

「何それ」

「一番いいときに死にたいからな」

「冗談でも”死ぬ”なんて言わないで――」


あたしたちの唇は、肌は、ふたたびぴったりと重なって。




甘い甘い時間は、早春の長い夜が明けてもいつまでも続いて、まるで時間そのものがなくなってしまったかのようだった。

< 250 / 331 >

この作品をシェア

pagetop