ふたつの指輪
いったん脱衣場の扉を開けて姿を消した魁人くんは、ひょいっと首だけ出した。

「――瞳衣。そのパジャマ、似合うな」

「え?」

ニッと微笑むと、また亜麻色の頭が引っ込む。


(似合ってる……?)


あたしは思わず自分を見下ろした。

こないだ尊さんのおうちに行った時にもらってきたパジャマ。


もともとあたしのものじゃなかったものだけど。

尊さんは「ここにあっても困るだろ」って、あたしに渡してくれたんだ。





シャワーの音を聞きながら。


(――ダチ?)


(リュウ、お前も客に惚れたことあんだろ)


ふと、あのときのことを思い出した。


「お友達って、リュウ、さんのこと?」


タオルで頭を拭きながら、ソファの周りを何となく歩き回ってた魁人くんは。

あたしの言葉に、タオルのすき間からギョッとしたようにあたしを見た。

形のよい眉を寄せて、薄色の瞳が探るような色合いを帯びる。


「そう、だけど――」

「リュウさんも、お客さんとなんかあったって、あの時言ってたの、聞いたから」

「……ああ」


小さくため息をついて、タオルをちょっぴり乱暴にソファに放り出すと。

魁人くんは、ソファに座るあたしの肩を後ろから抱きしめた。


「瞳衣。

あのときのことは忘れろよ……」

「あ、ごめんね。

別に、根に持ってたりするわけじゃないよ?

単に思い出しただけ」

「……わかってるけどさ」


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