ふたつの指輪
”自分自身”だと思い込んでることが、まったくそうじゃないことだってある。

あたしもそうだった。



(おまえな、お母さんから言われ続けた”出来の悪い人間”という自己イメージを持ったままなんだよ)



自分で勝手に思い込んで、自分のイメージを作り上げて、そこにはまりこんで抜け出せずにいた。

作り上げた自分のイメージから外れてしまう部分はすでに”自分”でさえなくて。

はなから気付くことさえできなかったもの。



その落とし穴から抜けるのは決して難しいことじゃない。


気づきさえすれば――



ーーー 


「瞳衣、どうしたんだよ」


ちょっぴりうろたえたような声がして、我に返った。


並んで寝そべったベッドの隣で、心配そうに少し眉をひそめて。

薄い色の大きな瞳がじっとあたしに注がれていた。


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