ふたつの指輪
「――何かあった?」

「……あ、ごめん、何でもない」


あたしは首を振る。


「何もなかったらそんな顔しねぇだろ。

言えよ」

「……ううん、大丈夫。ごめんね」


首を振り続けるあたしに、魁人くんは小さくため息をついた。

そのため息のせつなさに、あたしは思わず口を開いてた。


「あたし……魁人くんのおうちのこと、考えてたの」

「……ああ。その話か」


くだらない、とでも言うように鼻を鳴らす魁人くんに。

あたしは必死で言葉を探してた。



「おうちのことを思い出したくない気持ちはわかるの。

だけど、思い出したくないからって、そこにフタをするだけじゃ、何も変わらないと思うの。

逆に、いつか圧力が高まって破裂してしまうんじゃないかって」

「……」

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