ふたつの指輪
「そもそも、“思い出したくない”っていうこと自体が、まだまだそれにとらわれてるってことにならない?」

「……手厳しいな」

「ごめんね。

ほんとは、単にあたしが聞きたいの。

魁人くんのこと、全部知りたいんだもん。


教えて。

――どうして家出したの?」



魁人は、その薄色の瞳でじっとあたしを見つめて――

やがて、はぁ、と小さくため息をついた。



「そんなに聞きたきゃ言うけどさ。

言っとくけど、聞いてもつまんねぇからな。


そうだな……

うちはさ、とにかく親父の暴力がひどくて。

1日じゅう酒飲んでたからな。

酔っぱらってる親父はもう、理解不能の生き物だったよ。

しょっちゅう意味もなくぶん殴られてたし。

灰皿で思いっきり殴られて、顔が血だらけになったこともあった。


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