ふたつの指輪
「いくらオレが“やってない”って言っても、誰も信じてくれやしなかった。

誰もオレの言うことに耳を貸してくれない。

どれだけ真剣に誠心誠意訴えても、誰も聞く耳持たなかったよ。

――女は結構な優等生で、親は地元の名士ってやつでさ。

誰もがあっちを信じたんだ」

「そう……だったんだ」

「金持って女の家に謝りに行ったときとか、もう死ぬほど屈辱だったな。

頭下げながら唇噛んじまって、唇切れたくらい」


魁人くんは、自嘲気味にフンと笑った。

形のよい唇が皮肉げにゆがむ。



「だからかな。

ホストになってさ。

女が片っ端からオレに惚れて、大金重ねてバカみたいにすり寄ってくるのが、面白くてたまらなかった」


「……魁……」

「――今思うとそいつへの復讐だったんだろうな。

当時は、こんなに女だまして楽しいなんて、天職かと思ってたけどな」


魁人くんはあたしに笑いかけて、急に目を丸くした。

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