ふたつの指輪
「だれだってヒドい過去のひとつやふたつ、あるよ」


「ひとつやふたつじゃ、ねぇよ」


「……それでも同じだよ。

たとえ何があったとしても。

魁人くん自身が穢れるわけじゃないんだから。


まして、魁人くんは何も悪くなかったのに」



突っ張った、ひねた鎧の中にひそむ心は、こんなに繊細で、もろいのにね。



「自分を悪いと思う、その思いこそが壁なんだよ。

自分を“悪い”と思い込んでたら、自分の中のキレイな部分すら、見えなくなるよ」


「……キレイな部分なんて、ねぇってば」


「ほら!

またそんなことを言う!」


もどかしさに、涙が出そうになる。


「魁人くんの心はピュアで、とってもキレイだよ。

人に、悪いも良いもないもん。

それぞれの人に、悪い部分と良い部分が混ざってるだけなんだから。

自分の中のキレイな部分を、ちゃんと認めてあげて」



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