ふたつの指輪
「夏には花火大会がここからちょうど見えるんだって。

絶好のポジションらしいよ。

今年は逃しちゃったけどね。

そのときになったら、また来てよ」


「いいな」


俺も笑ってうなずいた。


「……お母さん、あれから元気?」

「うん、仕事頑張って行ってるよ。結構楽しいみたい」


マグカップ片手に窓の外を眺めながら。



「あのときは、いろいろありがとう」


ちょっと照れくさそうに言う。


「あたしほんとバカで……いろいろ迷惑もかけて……」


「おまえ何度言ってんだよ、それ」
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