ふたつの指輪
毎日のようにいろんな話をして。

少しずつお互いがわかってきて。


まるで恋人同士であるかのような錯覚を覚えるくらいに、俺たちは近くなっていったっけ。



日々、瞳衣の表情が明るくなっていくのを見るのは、あの頃の俺にとって大きな喜びだった。




(だめだ、この子は。

ちゃんと男がいるんだから)



自分に何度も言い聞かせながら。


それでも、瞳衣のことをかわいく思う自分をはっきり自覚していた。



俺も、もう少し自制心のある人間だと自分で思っていたのに。



こうすべきだと思う態度と、俺の気持ちが少しずつ剥離していって。


あの頃の俺の心は、常に複雑な思いで満たされていた。
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