ふたつの指輪
「運転手が怪しむだろ、さっさと乗れ」


ためらうあたしをタクシーの後部座席に容赦なくぐいっと押し込む。

自分も素早く隣に乗り込んで、運転手さんに行き先を告げた。



(ちょっと……どこ行くの?)


まだバクバク鳴ってる心臓をなだめながら、そっと隣を見上げると。

まっすぐ前を見たまま、相変わらず険しい顔してる。



その横顔のきっちり整ったラインを見ながら、


「あの……」


どこへ行くのか、とあたしが質問しかけたら。


運転手をちらっと見て、低く言った。


「着くまで、とりあえず黙ってろ」




(もう……強引な人……)


厳しい口調で言われて、むくれつつも、あたしは黙るしかなかった。



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