ふたつの指輪
「魁人」という名前そのままで出ていたこともあって、あいつの店は明け方までに何とか見つかった。



案の定、あいつの悪名は高かった。

数え切れない女を狂わせ、大金を落とさせながら、眉一つ動かさない。


天使のような顔をした、悪魔。




わかるような気はする。


男の俺でも思わずその後ろ姿を目で追いかけたような、全身から発散される強烈な魅力。



何か危険で、近づいてはいけないとわかっていても、ついふらふらと近づかずにはいられない。


――そんなヤツだから。




火に近づく虫みたいなもんだ。


焦げて命を落とすその瞬間まで、火の美しさに目がくらんでる。
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