ふたつの指輪
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あいつに背を向けるのは、瞳衣にとっては身を切るようにつらいことだったに違いない。

しかし、瞳衣は未練を断ち切るようにきっぱりときびすを返して、俺とともに歩き始めた。



頬に流れる幾筋もの涙をぬぐおうともせず。

ただ無言で、一歩一歩、確かな地面を踏みしめるように歩いてた。





「だめ、やっぱり、ちょっと行ってくる」

「ああ」


曲がり角で一度振り返って、あいつのところへ走り出す瞳衣の後ろ姿を見ながら。


そのときの俺はそれほど心配していなかった。



瞳衣は、俺と一緒に歩き出してたんだ。


あいつに背を向けて。
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