ふたつの指輪
こっちの世界へ、歩き出してたんだから。

戻って少し話をしたら、またこっちに走ってやってくる。



なんて楽観的な希望的観測を胸に、通行人の間からちらちら見える二人を見ていたら。


やがて、二人がだんだん遠ざかるのに気付いた。




(おい――)




思わず絶句して。


俺はその場に立ちつくしてた。



(行くのか?)




あいつのところへ。







その夜、いくら待っても、瞳衣は戻ってこなかった。



俺の手の中に大事に保護したと思っていた小鳥が。

わずかな指の隙間から、飛び立って去っていく――
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