ふたつの指輪
(――魁人(かいと)くん……)



思わず、好きな人の名前を心の中で呼んでた。





少女漫画から抜け出したみたいな、絵に描いたような美少年の魁人くん。

さらさらの、メッシュ入りの栗色の髪、ほっそりした姿。

涼しげな茶色い瞳。


ちょっぴり悪ぶった、危うい感じがまた強烈に魅力的。





喫茶店のバイトをしていたときに、お客さんとして来てたのが魁人くんだった。

”ずいぶんかっこいい人だな”なんて、ついついちらちら見てはいた。




それが、ある日向こうからデートに誘われて。

「かわいいね」とか、「何着ても似合うね」なんて、手放しで褒めちぎられて。

「そういうとこ、好きだよ」なんて、惜しげもなくささやかれる甘い言葉に、あたしは有頂天になってた。




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