ふたつの指輪
「だから、一度ゆっくり会って話しておきたかったの。

尊さんには、本当にお世話になったから。

尊さんがあたしに人生をくれたみたいなものだし」

「そんないいもんじゃないだろ。

俺は何もしてない」

「ううん」


瞳衣は真剣な表情で首を振った。


「尊さんがいなかったら、今のあたしはないもの。

あたし、ずっと自分がキライだった。

尊さんといろいろ話して、自己嫌悪とか、自己卑下の根っこが見つからなかったら、あたし、きっと永遠に自分がキライなままだったよ。


そんな状態で、人を愛することなんて、できっこない。

魁人くんへの気持ちも、きっと自信が持てないままだっただろうし」


「そう……か」
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