ふたつの指輪
やがて、タクシーが止まったのは、ごく普通の2階建てのこぎれいなハイツの前だった。

尊さんは、2階への階段をすたすた上がると、奥のドアを開けた。



「さっさと入れ」


言われるがままに、靴を脱ぐと、ぐいぐい背中を押された。


4.5畳くらいのキッチンと、10畳くらいの洋間がくっついた部屋。



(この人の家?)



――まさか、何かする気かな?



……まさかね。


あんなお店ですら何もしなかったのに。



「適当に座ってろ」


勧められるままに、サンドベージュのソファの端にちょこんと腰掛けた。

尊さんは、キッチンで何やらごそごそしてる。

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