ふたつの指輪
「あたしは、魁人さえいればそれでよかったのに。

あの人は、ああいう生き方しかできなかった」


静まりかえる部屋を、鳥のさえずる声が満たす。




あいつが死んでから。

自殺でもしやしないかと密かに怖れて、俺は会社を休んで三日三晩、瞳衣につきっきりだった。


しかしそれは、取り越し苦労だったようで。

瞳衣は俺の想像以上に気丈だった。


しょっちゅう泣き崩れてはいたけれど。



「今だから言えるけど……

正直、瞳衣が後を追うんじゃないかって、最初は怖れてたよ」


「――そうだったんだ。

心配かけてごめんなさい」


寂しげに微笑む。
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